メッセージ

1970年、アジアで初めての万博が開催され日本中が高度成長期に沸いていた頃、世田谷区で最初の特別養護老人ホームとして有隣ホームは創設された。
 当時国民のトレンドは、GNP・GDPの向上という目標に向かい、それが一つの心の支えとなっていた側面がある。物質主義偏向の流れはやがてバブル期をむかえ、そしてその崩壊という道をたどるのである。しかしながら経済的利潤、物質至上主義はなおも続いている。
 そのような中、「心の時代、癒しの時代」「スローライフ、スローフード」等と叫ばれ始めたのはここ数年の傾向であるが、有隣ホームでは当時としては画期的なターミナルケアにもいち早く取り組み、創設以来一貫して利用者の人間性の尊重を追求しつづけてきた。
 そのことは昨今取沙汰されだした「Living Will」「Let Me Decide」の実践でもあった。
 今回この建物の建築により、創設以来の一貫した理念と将来求められるであろう老人ホーム像の具現化をはかったつもりである。そしてそれは同時に従来の老人施設に対する既成概念の打破でもある。
 「人生のリゾート、The Lifelong Resort」をキーワードに掲げ、3年あまりに亘る建替え工事を関係各位のご支援のもと無事終了し、完成をみるに至ったが、まだこれはスタートラインであり、ケアスタッフに対するスピリチュアルケアの意識啓発等、それらの課題を達成せずには真の完成とはいえない。

“本当に大切なものは目に見えない”

                      2004年夏 
                                                      K.T.

           

 「みんなでにぎやかに、明るく楽しく」というのが好きな人もあれば、「一人静かに」というスタイルが合う人もあります。
 行事やレクリエーションに参加する自由と共に、参加を拒否する自由も保証されるべきでしょう。有隣ホームは、大人数でのアクティビティに順応できない人のことも考え続けています。
 生き方・考え方は人の数だけあります。入居者それぞれの生活歴や個性を尊重し、「老人ホーム…収容施設」という概念にとらわれずに、本音で生きられる生活の場を、有隣ホームは提供したいと考えます。


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